今、世界各地で運営中の航空会社は約400社ほどあります。選択肢が多いあまり、どうやって一番簡単で迅速に航空券を検索し、価格を比較することが重要な課題になっています。
ほとんどの旅行代理店や航空券比較サイトは簡単な機能しかありません。ExpertFlyerのようなサイトは自分でカスタマイズするような高度な作業はできるものの、諸費用込みの航空券総額の検索はできません。
ここで実用性の高い無料サイトITA Matrixをお薦めしたいと思います。
ITAは1996年、MITの学生が作ったソフトウェア会社で、2010年Googleに買収されました。ITAは多数の航空会社にシステム改善計画や解決案を提供し、ITA Matrixというツールも開発しました。
ITA Matrixは普通の人でも使いこなせる快適かつ全般的な機能を持ちながら、GDS (Global Distribution System)の自動検索及び特殊な要望を含め高度な航空券カスタマイズもできます。
目次
メイン検索機能
ITA Matrixのメイン画面です。
2024.4.23-2024.4.29のHND-GMP往復航空券を検索してみます。
検索結果には三つの表示方法があり、デフォルト(Complete Trips)は下記のように価格順で並べますが、希望の便を選ぶのに非常に面倒くさく、Individual flightsもしくはTime Barsのほうが断然効率がいいです。
Price、Airline、Departなどの希望条件順に並べることもできます。
Advisoryは該当便のディテールと注意事項です。
マウスを金額のところに移動させると(クリックしない)、飛行距離1マイルごとの航空券価格も表示されます。マイレージランにはとても便利です。
Individual flightsは1区間ずつ価格順で表示し、選んだ後に次の区間が出て最後までスムーズに選べます。
Time Barsはタイムラインで各区間の出発&到着&乗継時間や乗継地を表示し、Individual flightsと同じく1区間ずつ選ぶ必要があります。
灰色は乗継空港と時間を表示し、航空会社コードの後ろに*があればコードシェア便です。
この機能は個性的な選択をしやすく、例えば往路はANA上級会員だからANAマイルを最大限に貯める便を選び、復路は疲れたくないから直行便を選ぶとか、色々です。
検索結果で左側の金額をクリックすると、便の詳細、基本運賃、運賃規則及びコード、各種税金などが確認できます。
一部区間にYQが異常に高い場合は、近隣空港への変更がお薦めです。(例えば中国―アメリカ路線は香港出発が内陸出発より数百ドルのCarrier Imposed Surchargeを節約できます)
もし予約サイトで同じ航空券が見つからない場合は、灰色のFare constructionを伝えれば発券してもらえます。
ITA Matrixも運賃規則を提示しますが、指定された価格に対する運賃規則のみ提示で、ExpertFlyerのようにすべての運賃規則を提示してカスタマイズすることはできません。また、ITA Matrixは路線規則を教えてくれません。
独特な機能
See calendar of lowest fares
出発日にこだわらない人は、価格で日にちを選ぶこともできます。
Search exact dateのところに、See calendar of lowest faresを選び、一番早い出発日(Start Date)と目的地の滞在日数(Duration)を選べば、1か月間の検索ができます。滞在日数は数字もしくは範囲(例えば5-7)で入力可能です。
ただし日にち未定で検索するとサーバーに負担がかかり、1分経っても終わらない場合はエラーとなり、1分以内に検索結果が出てきても検索漏れで最安価格が表示されない可能性はあります。
Sales City
ANAの国内発券より海外発券がだいぶ安いことは、まさにSales Cityの制限です。国内線なら国内で、国際線なら航空券価格設定の低い国で買うと安いです。
そのため、検索時にメイン画面右下のSales Cityを入れることで価格がだいぶ安くなるかもしれません。
今回はSEOULを入力したら下記のようになりました。(金額は特に変わりません)
*一部の航空会社がITA Matrixに対し、この機能を閉鎖しました。また一部の国は、搭乗時に本国の身分証の提示が必須です。
Other
メイン画面右下のAllow airport changesは同じ都市で複数の空港が存在する場合、例えば東京のNRT/HND、ニューヨークのJFK/EWR/LGA、ロスのLAX/LGA/SNA/BUR/ONTなど、乗継時の空港変更可能ということです。
チェックを外せば検索結果にそういう便が出てこなくなります。
Only show flights and prices with available seatsは購入可能な予約クラスと価格が表示される意味です。
航空会社は毎週のセール状況によって特定の時間帯(基本は火曜日)で各予約クラスの販売可能枠を調整します。売れ行きがよければ安いクラスをブロック、悪くなったら再び出します。
チェックを外すと検索期間内に運賃規則に満たすすべての予約クラスの価格が表示されるので、最低でいくら払えば買えることがわかります。最低価格で販売されていなければ、時間をおいて再度確認するのもありです。
チェックを外した際の価格です。前文より多少下がりました。
特定コードによる路線デザイン
検索画面の空港入力欄の下にShow Advanced Controlsという項目があり、クリックするとRouting CodesとExtension Codesを入力できる空欄が出てきます。これらのコードを使用することで検索結果がより細かく絞れます。
Routing Codes
主に航空会社、空港、便名を制限します。
航空会社
2桁のIATAコードを入力することで航空会社を指定できます。NHならANA便です。
IATAコードの前に C: を入力すると、OZ9161(コードシェア便)=NH861(運航便)のように、検索結果に両方の便が出てきます。O: を入力すると運航便のみ表示されます。C: NHはコードシェア便を含めANA便名のすべての便で、O: NHはANA運航便です。
航空会社不問の直行便はNまたはF、乗継便はXを入力します。Nは普通の直行便で、Fは経由便も併せて検索します。またFは1区間の意味もあり、FFFなら3区間です。
空港
3桁のIATAコードを入力することで乗継空港を制限できます。
HND-GMPにKIXを入力すると、KIX乗継便だけ出てきます。
上記のXは任意の乗継便/乗継空港で、X:KIXならKIX乗継限定の乗継便を意味します。
便名
便名を入れることでその便の価格だけ出てきます。
各種記号の組み合わせ
複数の航空会社コード/空港コード/便名を [,] で繋げば、入力されたすべての航空会社便/乗継空港/便名が検索されます。例えば2024.4.23のHND-GMPに NH,OZ,KE を入れたら、この3社の便が表示されます。
[ ]は、すべての条件を満たす必要があります。例えば FUK PUS KE を入れたら、FUK、PUSの順で乗継し、最後はKE便で目的地に行きます。
[~]は、避けたいものを外します。例えば ~NH はNH便を排除する意味です。
便名を[-]で繋ぐ場合は、その範囲内に限定する意味です。特定の便でしかマイル積算ができないなど、特別な状況に対応します。例えば NH13-27 KE は1区間目をNH13-27の便名限定で、2区間目をKE便に指定します。
[+]は、指定条件だけ検索します。NH+ はコードシェア便を含めANA便だけで、乗継地と回数などは不問です。
[?]は、指定条件に満たす任意の結果を一つ表示され、満たさない場合は表示されません。[*]は[?]の結果を複数表示されます。
F * NH F * は最低1回NH便が必要で、その前後には適当に航空便を表示されてもいいという意味です。
Extension Codes
最大乗継回数:MAXSTOPS 1は乗継1回まで可能です。
最大所要時間:MAXDUR 24:00 は24時間以内に完了すべき旅程です。
総飛行距離:MAXMILES 10000 は総飛行距離10000マイル以内です。MINMILES 10000 は10000マイル以上です。
*MAXMILESは遠いところまで乗継回避のため、MINMILESはマイレージランのためです。
HND-GMP Routing CodesにNH+、Extension CodesにMINMILES 2000を入れると、総飛行距離2000マイル以上かつNH便名限定のため、日本国内で2回乗継必須です。
乗継時間:MINCONNECT 4:00は4時間以上の乗継時間を保証することです。MAXCONNECT 4:00は4時間以内です。
航空会社:Alliance star-allianceはスターアライアンス指定です。oneworldとskyteamも指定できます。AIRLINES NH JLはANAとJAL便名指定で、OPAIRLINES NH JLはANAとJAL運航便指定です。
予約クラス検索:/f bc=w はWクラスを、/f bc=y|bc=b はYクラスもしくはBクラスを検索するコードです。CABINの後ろに数字を入れると座席クラスの指定ができます。1から4はファーストクラスからエコノミークラスの順を表示します。+CABIN 1 2 はファーストクラスとビジネスクラスのみです。
○○不可:-の後ろに各種コードを入れます。-CODESHARE、-REDEYES、-OVERNIGHTS、-NOFIRSTCLASSはコードシェア便/夜間フライト/翌日乗継/ファーストクラスなし不可です。-CITIESは乗継不可都市(例えば-CITIES NRT KIX)、-AIRLINES、-OPAIRLINES、-CABINも同じように使えます。
路線デザイン実例
ITA Matrixはユーザーが指定した各種要望に合わせ、各航空会社の運賃規則や既存の販売枠と照会し、一番便利なルートかつ安い料金を提示してくれます。ただし、入力されたRouting CodesとExtension Codesに販売可能な安い運賃がない場合、料金が異常に高く表示されます。
複数のトランスファーやストップオーバー、End-on-End、Embeded Surface Sector、Interline Flightsなど、複雑な要望は、運賃規則と路線規則を熟知の上でしか利用できません。そういう需要があればExpertFlyerを紹介する記事も、併せてお読みください。
*コロナ後の航空業界はまだ完全に元に戻っていないため実例1以外は2018年の旧データーを使っています。戻り次第記事内容を更新します。
実例1:日米往復ダブルストップオーバー付き
NRTからSFOに行く予定で、往復途中どっかで一日以上ストップオーバーをします。
往復Routing CodesにX、Extension CodeにMINCONNECT 24:00を入力します。最低価格を見つけるためOnly show flights and prices with available seatsのチェックを外しました。
各社ごとの金額が提示され、一番安いのがシンガポール航空とアラスカ航空の組み合わせです。
ご注意:往復旅程で検索できるストップオーバーは48時間までで、それ以上の場合はMulti-Cityで検索する必要があります。
実例2: 太平洋諸島周遊旅行
NRT出発AKLに行き、途中でRAR、PPTまたはNANで遊んでAKLに行き、帰りはHNLも寄りたいです。
Routing Codesの行きにrar、ppt、nan、帰りにhnl、往復Extension CodeにMINCONNECT 48:00を入れます。NZとUAの組み合わせ航空券が約$1100 で、ストップオーバーなしの直行便より数十ドルの税金が増えるだけです。NZセール時にはたったの$400ちょっとでゲットできます。
実例3:UAアイランドホッピング
アメリカ州とアジア州のUA運航便は、通常ルートではなくGUMとHNLに寄ってもいい設定です。
アイランドホッピングはRouting Codesでも利用できます。
PVG-LAX往復で、往路のRouting Codes gum ua155 hnl ua+は、GUM乗継の後アイランドホッピング線のUA155で2番目の乗継地HNLに行き、その後は乗継回数不問のUA便に搭乗します。復路はシステムに任せたところ、合計価格$630で、下記直行便よりも安いです。
実例4:完全カスタマイズ
上記の実例は航空会社や乗継空港など選択肢が多いため、サーバーに負担がかかりほしい検索結果が必ず出るとは限りません。
もし運賃規則と路線規則に詳しく各区間の空席枠も大体把握していれば、規則通りに運航便を選定してRouting Codesに入れるのがベストです。Multi-Cityは最大6区間検索可能でできるだけストップオーバーやオープンジョーに沿って区間を分け、1区間ごとの乗継便を四つまでに制限します。一つの航空券番号には16便まで入れます。
BOS- PVG往復を適当に検索した結果です。
もっと合理的なプランなら、すべての乗継地点で24時間ほどの弾丸旅行ができるはずです。
*DLの規則改定でアメリカ州と東アジア路線にいくつかのルート制限をかけたため、このような旅程はもう組めなくなりました。
発券方法
ITA Matrixで細かく検索できるものの、航空券の販売はしておらず、航空会社のHPまたは旅行会社で購入するしかありません。ただし、航空会社のシステムで複雑な路線がなかなか検索結果に出てこなく、旅行会社はカード優待やボーナスマイルなどの特典がなく迅速なアフターサービスを提供できない恐れがあります。
同じ日程を発券できるところで検索するか、チケット詳細画面のFare Constructionを直接トラベルエージェントに伝えればいいです。
前はチケット詳細画面右下のShare & ExportでCopy itinerary as JSONをクリックしてそのまま
へコピペすると、そのまま購入できるリンクが表示されますが、今は使えない状況が多いです。
これでITA Matrixの使い方を一通り紹介しましたがいかがでしょうか?英語のみでやや使いづらいですが、慣れると非常に便利なツールだと思います。ぜひ活用してみてください。